1. 課税事業者となった場合(法36条1項)
(1) 内容
免除事業者が課税事業者となった場合において、その課税事業者となった課税期間の初日※の前日において、免税事業者であった期間中に、国内において譲り受けた課税仕入れ(特定課税仕入れを除く。)に係る棚卸資産を有しているときは、その棚卸資産に係る消費税額(取得に要した費用の額に108分の6.3を乗じて算出した金額)を、その課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなす。
(2) 定義
① 棚卸資産
棚卸をすべき資産で、商品又は製品その他これに準ずるものをいう。また、この規定の適用に当たっては、課税仕入れ等に係る棚卸資産を原材料として製作・建設されたものも含まれる。
2. 事業を承継した場合(法36条第3・4項)
- 個人事業者(免税事業者を除く。)が相続により、免税事業者である被相続人の事業を承継した場合において、その被相続人が免税事業者であった期間中に、国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産を引き継いだときは、その棚卸資産に係る消費税額を、その引継ぎを受けた個人事業者のその相続があった日の属する課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなす。
- (1)の規定は、法人(免税事業者を除く。)が合併又は分割により、免税事業者である被合併法人又は分割法人の事業を承継した場合について準用する。
3. 保存要件
(1) 要件(法36条第2項)
上記1及び2の規定は、事業者が、その棚卸資産の明細を記録した書類を保存しない場合には、適用しない。
ただし、災害その他やむを得ない事情により、その保存をすることができなかったことを証明した場合は、この限りでない。
(2) 保存期間(令54条第3項)
その書類を作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、その事業者の納税地又はその事務所等の所在地に保存しなければならない。
(3) 一定の保存方法の許容(令54条第5項)
その課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から5年を経過した日以後の期間における保存は、一定の方法によることができる。
4. 課税事業者が免税事業者となった場合(法36条5項)
課税事業者が免税事業者となった場合において、免税事業者となった課税期間の初日の前日において、その前日の属する課税期間中に国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産を有しているときは、その棚卸資産に係る消費税額は、その課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額に含まれないものとする。
※ 相続、吸収合併又は吸収分割の納税義務の免除の特例により、課税事業者となった場合には、その課税事業者となった日