1. 中小事業者の仕入れに係る消費税額控除の特例
(1) 内容(法37条1項)
事業者(免税事業者を除く。)が、納税地の所轄税務署長に、基準期間における課税売上高が5千万円以下である課税期間(分割等に係る課税期間を除く。)について、簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その提出した日の属する課税期間の翌課税期間※1以後の課税期間※2については、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、原則にかかわらず、一定の金額とする。
この場合において、その金額はその課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(2) 控除税額
次の①と②の金額の合計額とする。
- ① その課税期間の課税資産の譲渡等(輸出免税取引及び特定資産の譲渡等を除く。)に係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から、売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額にみなし仕入率を乗じて計算した金額
- ② その課税期間の特定課税仕入れに係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から、特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を控除した残額にみなし仕入率を乗じて計算した金額
(3) 一定の課税期間(令56条)
一定の課税期間とは次の期間をいう。ただし、②~④については、納税義務の免除の特例により、課税事業者となる課税期間に限る。
- ① 事業者が国内において課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く。)に係る事業を開始した日の属する課税期間
- ② 個人事業者が相続により簡易課税の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合におけるその相続があった日の属する課税期間
- ③ 法人が吸収合併により、簡易課税の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における、その合併があった日の属する課税期間
- ④ 法人が吸収分割により、簡易課税の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合における、その吸収分割があった日の属する課税期間
2. 選択不適用届出書(法37条5・6・7項)
(1) 届出
簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、その適用を受けることをやめようとするとき又は事業を廃止したときは、簡易課税制度選択不適用届出書を、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(2) 効果
簡易課税制度選択不適用届出書の提出があったときは、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日以後は、簡易課税制度選択届出書は、その効力を失う。
(3) 届出の制限
簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、その届出の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、簡易課税制度選択不適用届出書を提出することができない。
3. 簡易課税制度の適用制限
(1) 届出の制限(法37条3項)
事業者が次のいずれかに該当する場合には、その調整対象固定資産又は高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から同日(自己建設高額特定資産の場合は、その建設等が完了した日の属する課税期間の初日)以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、簡易課税制度選択届出書を提出することができない。
ただし、事業者が事業を開始した日の属する課税期間その他一定の課税期間から簡易課税の適用を受けようとする場合に、その届出書を提出するときは、この限りでない。
- ① 調整対象固定資産の課税仕入れ等を行ったことにより、課税事業者選択不適用届出書の提出の制限を受ける場合
- ② 新設法人又は特定新規設立法人が、その基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間中に、調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合
- ③ 高額特定資産の仕入れ等を行った場合(①・②に該当する場合を除く。)
(2) 届出書の提出がなかったものとみなされる場合(法37条4項)
(1)の場合において、その調整対象固定資産又は高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日からその仕入れ等の日までの間に、簡易課税制度選択届出書をその納税地の所轄税務署長に提出しているときは、その届出書の提出はなかったものとみなす。
4. 宥恕規定(法37条8項・令57の2)
(1) 内容
事業者が、やむを得ない事情があるため簡易課税制度選択届出書を、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日(一定の課税期間である場合には、その課税期間の末日)までに提出できなかった場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、簡易課税制度選択届出書を、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日にその税務署長に提出したものとみなす。
事業者が、やむを得ない事情があるため簡易課税制度選択不適用届出書を、その適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日(一定の課税期間である場合には、その課税期間の末日)までに提出できなかった場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、簡易課税制度選択不適用届出書を、その適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日にその税務署長に提出したものとみなす。
(2) 申請書の提出
(1)において、事業者は、その届出書をその課税期間の初日の前日までに提出できなかった事情等を記載した申請書を、その事情がやんだ後相当の期間内に、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
5. 災害等があった場合の簡易課税制度に係る届出の特例(法37の2)
事業者側の規定
(1) 届出の特例
災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた簡易課税の適用を受ける事業者が、その被害を受けたことにより、不適用被災課税期間につき簡易課税の適用を受けることをやめることについて、その納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、簡易課税制度選択不適用届出書を、その不適用被災課税期間の初日の前日に、その税務署長に提出したものとみなす。
この場合において、2(3)の不適用届出書の提出制限の規定は適用しない。
(2) 申請書の提出
(1)の承認を受けようとする事業者は、簡易課税の適用を受ける必要がなくなった事情等を記載した申請書を、災害等のやんだ日から2月以内(一定の場合には、確定申告書の提出期限まで)に、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
(1) 届出の特例
災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた簡易課税の適用を受けない課税事業者が、その被害を受けたことにより、選択被災課税期間につき簡易課税の適用を受けることについて、その納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、簡易課税制度選択届出書を、その選択被災課税期間の初日の前日に、その税務署長に提出したものとみなす。
この場合において、調整対象固定資産又は高額特定資産の仕入れ等を行ったことによる選択届出書の提出制限に関する規定は適用しない。
(2) 申請書の提出
(1)の承認を受けようとする事業者は、簡易課税の適用を受けることが必要となった事情等を記載した申請書を、災害等のやんだ日から2月以内(一定の場合には、確定申告書の提出期限まで)に、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
※1 その提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他一定の課税期間である場合には、その課税期間
※2 その基準期間における課税売上高が5千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。