1. 仕入れに係る消費税額の控除(法30条1項)
事業者(免税事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れを除く。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、その課税仕入れを行った日、特定課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日、特例申告書を提出した日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、その課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(その課税仕入れに係る支払対価の額に108分の6.3を乗じて算出した金額)、その課税期間中に国内において行った特定課税仕入れに係る消費税額(その特定課税仕入れに係る支払対価の額に100分の6.3を乗じて算出した金額)及びその課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約により消費税が免除されるものを除く。)につき課された又は課されるべき消費税額の合計額を控除する。
2. 帳簿及び請求書等の保存
(1) 適用要件(法30条7項)
1の規定は、その帳簿及び請求書等を保存しない場合には、適用しない。
ただし、災害その他やむを得ない事情により、その保存をすることができなかったことを証明した場合は、この限りでない。
(2) 帳簿のみの保存で足りる場合(令49条)
- ① 課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円未満である場合
- ② 課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上である場合において、請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない理由があるとき(帳簿にそのやむを得ない理由、課税仕入れの相手方の住所又は所在地を記載している場合に限る。)
- ③ 特定課税仕入れに係るものである場合
(3) 保存期間(令50条)
① 原則
帳簿についてはその閉鎖の日、請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所等の所在地に保存しなければならない。
② 一定の帳簿又は請求書等
一定の帳簿又は請求書等については、その課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から5年間を超えて保存することを要しない。
(4) 一定の保存方法の許諾(令50条第2項)
その課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から5年を経過した日以後の期間における保存は、一定の方法によることができる。
3. 区分計算(法30条2・4項)
(1) 内容
1の適用に当たっては、その課税期間における課税売上高が5億円を超えるとき又はその課税期間における課税売上割合が95%に満たないときは、その控除する課税仕入れ等の税額の合計額は、次の区分に応じ、それぞれに定める方法により計算した金額とする。
- ① 仕入区分が明らかにされている場合・・・個別対応方式又は一括比例配分方式
- ② ①以外の場合・・・一括比例配分方式
なお、仕入区分が明らかにされている場合とは、その課税期間中に国内において行った課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びにその課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに、区分されている場合をいう。
(2) 意義
① 課税仕入れ等の税額
課税仕入れに係る消費税額、特定課税仕入れに係る消費税額及び保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額をいう。
② 個別対応方式
課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額の合計額に、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する方法をいう。
③ 一括比例配分方式
その課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法をいう。
4. 課税売上割合に準ずる割合(法30条3項)
個別対応方式において、課税売上割合に準ずる割合で次の要件の全てに該当するものがあるときは、その承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間の個別対応方式の計算については、課税売上割合に代えて、その準ずる割合を用いて計算する。
- その割合がその事業者の営む事業の種類又は費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること
- その割合を用いて計算することにつき、納税地の所轄税務署長の承認を受けたものであること
ただし、その準ずる割合を用いて計算することをやめようとする旨を記載した届出書を提出した日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。
5. 一括比例配分方式の継続適用(法30条5項)
事業者は、一括比例配分方式により計算することとした課税期間の初日から同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間において、その方法を継続して適用した後の課税期間でなければ、個別対応方式により計算することはできない。
6. 仕入税額控除の適用制限(法30条11項)
事業者が、課税仕入れに係る資産が納付すべき消費税を納付せずに保税地域から引き取られた課税貨物である、と知りながら行った課税仕入れについては、1の規定は適用しない。
7. 意義(法30条5項)
(1) 課税仕入れ(法2条1項12号)
事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、借り受け又は役務の提供(所得税法に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けることをいう。
ただし、その他の者が事業としてその資産を譲り渡し、貸し付け又はその役務の提供をしたとした場合に、課税資産の譲渡等(輸出免税取引を除く。)に該当することとなるものに限る。
(2) 課税仕入れに係る支払対価の額
課税仕入れの対価の額(対価として支払い又は支払うべき、一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、消費税額及び地方消費税額相当額を含む。)をいう。
(3) 特定課税仕入れに係る支払対価の額
特定課税仕入れの対価の額(対価として支払い又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額)をいう。
(4) 保税地域からの引取りに係る課税貨物
保税地域から引き取った一般申告課税貨物又は特例申告書の提出等に係る課税貨物をいう。
(5) 課税期間における課税売上高
その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く。)の対価の額の合計額から、その課税期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいう。
なお、課税期間が1年に満たない場合には、その残額を年換算した金額とする。
(6) 課税売上割合
次の①の金額のうちに②の金額の占める割合とする。
- ① その課税期間中に国内において行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く。)の対価の額の合計額から、その課税期間中に国内において行った資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額の合計額を控除した残額
- ② その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く。)の対価の額の合計額から、その課税期間中に行った売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額