小規模事業者に係る納税義務の免除

概要

小規模事業者の納税義務の免除

消費税においては、中小事業者の納税事務負担などに配慮して、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者については、消費税の納税義務を免除する制度(事業者免税点制度)が設けられています。

これを消費税法では一般に「小規模事業者に係る納税義務の免除」と言います。

● 基準期間と基準期間における課税売上高

小規模事業者に係る納税義務の免除の判定では、次の2つのことを行います。

  1. 基準期間の判定
  2. 基準期間における課税売上高の算定

この2で算出をした「基準期間における課税売上高」が1千万円以下である場合には、その課税期間における「課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れ」につき、消費税の納税義務が免除されます。

では、次からこの判定・算定方法について説明をしていきます。

● 基準期間の判定方法

基準期間は「個人事業者」か「法人」かによって異なります。

1. 個人事業者の基準期間

個人事業者の基準期間はいたってシンプル。その年の前々年が基準期間になります。

個人事業者の基準期間

上の図では、対象期間がX5年ですので、その前々年はX3年になります。

したがって、この場合の基準期間はX3年1月1日からX3年12月31日までの期間となります。

ちなみに、個人事業者の場合、基準期間は必ず存在します(つまり事業をしていない期間も含めて考えるということです。)

2. 法人の基準期間

法人の基準期間は、前々事業年度が1年以上1年未満によって異なります。

(1) 前々事業年度が1年以上の法人

前々事業年度が1年以上の法人は、その事業年度の前々事業年度が基準期間になります。

前々事業年度が1年以上である法人の基準期間

上の図では前々事業年度がX3年4月1日からX4年3月31日であり、期間がちょうど1年であるため、前々事業年度が1年以上の法人に該当します。

したがって、この場合の基準期間はX3年4月1日からX4年3月31日までの期間となります。

なお、法人の場合は個人事業者と異なり、基準期間がない事業年度も存在します。(例えば設立事業年度の場合は基準期間は存在しません。)

ここで勘違いしやすいのが、次の2つの場合です。

事業年度が1年でない場合
前々事業年度が1年を超える場合

① 前事業年度が1年でない場合

法人の場合、前々事業年度が1年であれば、たとえ前事業年度が1年でなくとも、その前々事業年度が基準期間になります。

前期が1年でない、前々事業年度が1年である法人の基準期間.PNG

上の図では、前事業年度は6ヶ月ですが、前々事業年度は1年です。

したがって、この場合も先ほどと同様に、前々事業年度X3年10月1日からX4年9月30日)が基準期間となります。

② 前々事業年度が1年を超える場合

前々事業年度が1年を超える場合(例えば18ヶ月の場合)も、前々事業年度が1年以上の法人に該当しますので、その1年を超える期間が基準期間となります。

(2) 前々事業年度が1年未満の法人

前々事業年度が1年未満である法人は、基準期間の判定が少し複雑ですが、試験でよく出ますのでしっかり覚えましょう。

前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間が基準期間になります。

基準期間が1年未満の法人の基準期間

上の図では、前々事業年度(X3年11月16日~X4年9月30日)11ヶ月ですので、前々事業年度が1年未満の法人に該当します。

この場合には、事業年度開始の日(X5年4月1日)の2年前の日(X3年4月2日)の前日(X3年4月1日)から同日以後1年を経過する日(X4年3月31日)までの期間内に開始する事業年度を探します。

上の図ではX3年11月16日からX4年9月30日までの事業年度がその期間内に開始していることが分かります。

したがって、この場合の基準期間はX3年11月16日からX4年9月30日までの期間となります。

● 基準期間における課税売上高の算出方法

1. 個人事業者及び基準期間が1年の法人

「個人事業者」及び「基準期間が1年の法人」の基準期間における課税売上高は、次の算式により計算をします。

基準期間における課税売上高=課税資産の譲渡等の対価の額の合計額売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額

2. 基準期間が1年ではないの法人

「基準期間が1年ではない法人」の基準期間における課税売上高は、上の算式により計算をした残額を、その基準期間の月数で除し、12を乗じた金額となります。

つまり、基準期間が1年でない場合(1年を超える場合や1年に満たない場合)には、その基準期間における課税売上高を12ヶ月分に換算するということです。

基準期間が1年未満の法人の基準期間における課税売上高の計算

上の図では、第2期が前々事業年度に当たりますが、第2期は6ヶ月のため「前々事業年度が1年未満の法人」に該当します。

したがって、事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始する事業年度を探すと、第1期と第2期の開始日がこの期間内に含まれることが確認できますので、これらの期間の合計は5ヶ月+6ヶ月より11ヶ月となります。

次に、この基準期間における課税売上高を計算すると、「0円 + 990万円」より990万円となります。(なお、第1期と第2期は免税事業者であったため、税抜処理をしません。)

したがって、この基準期間の課税売上高を12ヶ月分に換算をすると「990万円 ÷ 11ヶ月(※) × 12ヶ月 = 10,800,000円」となり、1千万円を超えるため納税義務者に該当することがわかります。

なお、計算に当たっては、※の位置で一度で切り捨て処理をします。その切り捨て処理をした金額に12を乗じて算出します。

● Advance:法人成りと商号変更

ここでプラスαの知識をご紹介します。たまに試験や模試でも出ますので、こちらも押さえておきましょう。

法人成りの場合

例えば個人事業者として事業をしていた人が、株式会社(法人)として事業を開始することがあります。これを一般に「法人成り」と言います。

個人事業者が法人成りした場合の基準期間

この時に問題となるのが、「個人事業者 = 法人成りをした会社」と考え、個人事業者であった頃の売上をその会社の基準期間の判定に当たって考慮するのか?ということです。

結論から言えば「ならない」ということになります。

理由は、法人成りした会社と個人事業者は別個独立した存在であるため、法人成りをした会社の基準期間の判定に当たって、個人事業者を考慮する必要がないからです。

商号変更の場合

一方、有限会社や合同会社などから株式会社へ「商号変更」をした場合は法人成りの場合と取り扱いが異なります。

商号変更の場合

商号変更の場合には、消費税法上、従前の有限会社(合同会社)と株式会社は同一であると考えます。

したがって、株式会社の基準期間の判定及び基準期間における課税売上高の算定では、従前の有限会社(合同会社)の事業年度及びその事業年度における売上高も考慮の上、判定と算出を行います。

● 参考