低額譲渡とみなし譲渡

概要

消費税法では、消費税が課税される取引は、原則として、次の4要件を満たすものに限られています。

  1. 国内取引
  2. 対価性のある取引
  3. 事業性のある取引
  4. 資産の譲渡、貸付け又は役務の提供

そのため、贈与自己のための消費(自家消費)については、対価を受領していないため、上記の4要件のうち「対価性のある取引」を満たしていません。

したがって、その贈与などに対しては消費税は課税されないというのが原則的な取り扱いとなります。

また、消費税法では、実際に授受された金額をもって課税標準とするため、たとえ時価より安い価格で取引があったとしても、その安い価格が課税標準となります。

But

しかしながら、これを全ての取引に対して無制限に認めたのでは、「個人事業者」や「法人の役員」が、消費税を支払わずに、不当に物の提供を受けることができてしまうため、一般消費者と比較して課税の公平性が損なわれてしまいます。

みなし譲渡と低額譲渡の課税の不公平性

そこで、消費税法では、一定の「贈与」や「自家消費」については課税資産の譲渡等に該当するものとみなし、その上で消費税が課税されます。

また、一定の「低額譲渡」については時価により取引があったものとみなし、その時価をもって消費税が課税されます。

これを消費税法では一般に「みなし譲渡」・「低額譲渡」と言います。

● みなし譲渡

次の2つの取引に対しては、課税資産の譲渡等があったものみなして消費税を課税します。

  1. 個人事業者が資産を家事(自己)のために消費・使用した場合
  2. 法人が資産を自社役員贈与した場合

1. 個人事業者が資産を自家消費した場合

みなし譲渡(自家消費・家事消費)

1つ目は、個人事業者課税仕入れをした資産自分又は自分の家族のために、消費または使用した場合です。(このことを自家消費と言います。)

この場合、自家消費は4要件のうち「対価性のある取引」または「資産の譲渡」を満たしていませんが、消費税法上、課税資産の譲渡等があったものとみなして、消費税が課税されます。

2. 法人が資産を自社の役員に贈与した場合

役員への贈与(みなし譲渡)

2つ目は、法人課税仕入れをした資産自社役員贈与した場合です。

この場合も、贈与は4要件のうち「対価性のある取引」を満たしていませんが、消費税法上、課税資産の譲渡等があったものとみなして、消費税が課税されます。

なお、この規定は、他社の役員に対するものは適用対象外ですので、注意しましょう。

3. みなし譲渡の場合の対価の額

以上より、「個人事業者の自家消費」と「法人の自社役員に対する贈与」については、課税資産の譲渡等に該当するものとして、消費税が課税されることが分かりました。

では、いくらで譲渡されたと考えるのでしょうか?

消費税法では、その譲渡された資産が「棚卸資産」か「棚卸資産以外」かでその対価の額が異なることになります。

棚卸資産の場合(重要)

譲渡された資産が棚卸資産である場合は、次のいずれか大きい金額(法人不利)で譲渡されたものとみなされます。

  1. 時価 × 50%
  2. 仕入価額(※)

製品である場合は、製品原価のうち課税仕入れからなる金額の合計額をもって「仕入価額」とします。

棚卸資産以外の場合 ← こっちが原則

譲渡された資産が棚卸資産以外である場合は、時価で譲渡されたものとみなします。

なお、時価とは「通常の販売価額」を言います。

● 低額譲渡

低額譲渡とみなし譲渡

1. 内容

みなし譲渡の規定は「無償取引に対する租税回避行為の防止」を目的とした規定ですが、これだけでは不十分です

例えば、時価が100万円の物を10円で譲渡した場合はどうでしょうか?

この場合、たとえ10円であっても有償取引である以上、みなし譲渡の規定だけでは租税回避行為は防ぎきれません。

そこで、たとえ有償取引であっても低額譲渡に該当する場合には、その取引は時価による譲渡があったものとみなして、消費税を課税します。

要注意

なお、低額譲渡の規定は次の3点に要注意しましょう。

  1. この規定は法人に対する規定で、個人事業者に対しては適用されません
  2. この規定は低額譲渡に対する規定で、低額によるサービス(役務提供)に対しては適用されません
  3. 役員に販売した価格が著しく低い価格であっても、その価額が役員及び使用人の全員に対して、一律に又は勤続年数等に応ずる合理的な基準により定められた値引き率等に基づき定められた価格である場合には、それは低額譲渡には当たりません。

2. 低額とは?

最後に「低額」の意味を確認します。

まずは原則論から。

低額とは時価の50%未満である場合を言います。(未満は法人有利の考え方です。)

ただし、低額譲渡されたものが棚卸資産である場合には、その対価の額が次の(1)及び(2)の金額以上である場合には、低額譲渡には該当しないものとされます。

  1. 時価 × 50%
  2. 仕入価額(※)

製品である場合は、製品原価のうち課税仕入れからなる金額の合計額をもって「仕入価額」とします。

低額譲渡の例外

法人が課税資産を役員に対して著しく低い価額により譲渡した場合であっても、その資産の譲渡が、役員及び使用人の全部について一律に又は勤続年数などに応じて合理的に定められた値引率に基づき行われた場合は、時価ではなく実際の対価の額により課税されます

● 参考